chapter53 福岡県はインフルエンザが流行しやすい?
毎年冬になって空気が乾き、気温が下がると呼んでいないのにやって来て、大暴れしていくヤツがいます。そう、インフルエンザです。現在(2011年1月下旬)、例年以上に冷え込む日本列島に猛威を振るい、学校や職場などでインフルエンザに対する注意が呼びかけられ ています。
どこからともなく発生して一気に流行するインフルエンザですが、インフルエンザが流行しやすい地域ってあるんでしょうか?
そこで、今回の『知ってた?福岡』では、
~ 「福岡県はインフルエンザが流行しやすい?」 ~
と題して、平成15年(2003年)、平成17年(2005年)、平成19年(2007年)の3年を集計し て、年間でインフルエンザ流行の警報を保健所1か所あたりが発した平均回数を都道府県別でランキングしました。福岡県はインフルエンザが流行しやすい地域 といえるのでしょうか?
インフルエンザ流行レベルマップとは?

今回集計のために資料として利用したのは、国立感染症研究所の感染症情報センターが発表している「インフルエンザ流行レベルマップ」。
インフルエンザ流行レベルマップは、インフルエンザ定点医療機関(全国に約5,000か所)を受診 したインフルエンザ患者数をもとに、インフルエンザの大きな流行の発生・継続が疑われることを示す警報と、流行の前兆や未終息の状況が見られることを示す 注意報とを、都道府県単位に塗り分けた地図です。
ここでいう警報や注意報は、各都道府県で警報レベルを超えている保健所の数と注意報レベルを超えている保健所の数によるもので、あくまで流行状況の指標であり、都道府県として発令される「警報」とは異なります。
今回のランキングでは、インフルエンザ流行レベルマップのデータから、平成15年(2003年)、平成17年 (2005年)、平成19年(2007年)の3カ年で、それぞれ第1週~13週(おおむね1~3月まで)と第45週~52週(おおむね11~12月)の間 に、保健所1か所あたりで発生した警報の回数の平均化し、警報の平均回数の多いほうから並べました。つまり上位ほど3カ年においてインフルエンザが大きく 流行した都道府県だということになります。
なお、インフルエンザは一般的に冬期に発生・流行するため、第1週~13週(おおむね1~3月まで)と第45週~52週(おおむね11~12月)の期間での集計で年間の集計と見なします。
前置きが長くなりましたが、いよいよランキングの発表です!福岡県はインフルエンザが大きく流行した地域なのでしょうか?
都道府県別の保健所1か所当たりの年間インフルエンザ警報の平均回数が最も多いのは宮崎県、福岡県は第10位
このランキングを見ると、平成15年(2003年)、平成17年(2005年)、平成19年(2007年)の 3カ年において、都道府県別の保健所1か所当たりの年間インフルエンザ警報の平均回数が最も多かったのは、宮崎県で8.30回で、次いで広島県の7.97 回、福井県の7.83回と続きます。
逆に都道府県別の保健所1か所当たりの年間インフルエンザ警報の平均回数が最も少なかったのは、山梨県で2.71回、次いで東京都の3.34回、島根県3.90回と続きます。
福岡県は7.17回で10位にランクイン。どちらかというと比較的インフルエンザが大きく流行した地域だと言えそうです。
ただこのランキングの上位、下位の都道府県を見る限り、宮崎県はもっとも警報の平均回数の多い一方、隣接する鹿児島県は38位と警報の平均回数は少なくなっており、特に地域的な偏りはないようです。
また沿岸の県もあれば長野県や滋賀県など内陸の県も上位に入るなど、地形的な偏りも見られません。
人口密度1位の東京都と44位の島根県が、このランキングでは46位と45位と並んでおり、人口密度もインフルエンザの流行にはあまり関連はなさそうです。
ただ、このランキングのデータの元となる平成15年(2003年)、平成17年(2005年)、平成19年(2007年)の3カ年でのそれぞれ上位15位までの県の推移を見てみると、インフルエンザがよく流行した地域は重複する傾向があるようです。
2007年 (平成17年) |
2005年 (平成15年) |
2003年 (平成13年) |
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全国 | 10.0 | 全国 | 1.8 | 全国 | 5.9 | |
1 | 広島県 | 15.7 | 宮崎県 | 3.6 | 宮崎県 | 8.2 |
2 | 愛媛県 | 15.0 | 広島県 | 3.4 | 佐賀県 | 7.6 |
3 | 福井県 | 14.7 | 大分県 | 3.4 | 静岡県 | 7.6 |
4 | 石川県 | 14.2 | 福岡県 | 3.4 | 三重県 | 7.1 |
5 | 滋賀県 | 14.1 | 愛知県 | 3.4 | 新潟県 | 7.0 |
6 | 香川県 | 14.0 | 福井県 | 3.3 | 沖縄県 | 7.0 |
7 | 宮城県 | 13.7 | 山形県 | 3.3 | 長野県 | 6.9 |
8 | 長崎県 | 13.3 | 三重県 | 3.0 | 山口県 | 6.8 |
9 | 栃木県 | 13.2 | 滋賀県 | 3.0 | 千葉県 | 6.8 |
10 | 千葉県 | 13.1 | 鳥取県 | 2.7 | 福岡県 | 6.7 |
11 | 宮崎県 | 13.1 | 石川県 | 2.6 | 埼玉県 | 6.5 |
12 | 佐賀県 | 13.0 | 佐賀県 | 2.6 | 富山県 | 6.4 |
13 | 静岡県 | 12.9 | 長野県 | 2.5 | 石川県 | 6.4 |
14 | 長野県 | 12.6 | 群馬県 | 2.5 | 長崎県 | 6.4 |
15 | 富山県 | 12.4 | 新潟県 | 2.4 | 熊本県 | 6.4 |
宮崎県や佐賀県、石川県などはインフルエンザが流行しやすい県なのか?
それでは宮崎県や佐賀県、石川県などは今後もインフルエンザが流行しやすい県だということなのでしょうか?
もちろんそうだという事はできません。
もともとのデータが必ずしも各都道府県同じ基準で回収されているとは断定できないからです。
このランキングの元となったインフルエンザ流行マップに使用されているデータは、前述した全国に約5,000か所のインフルエンザ定点医療機関から報告されるインフルエンザ受診患者数です。定点医療機関というのは、いわゆる地域にある病院や診療所のこと。
そうなるとインフルエンザに対して、疑わしい症状や快復しつつある状況の場合など報告するかしないかが各病院や医師によって異なってくることがよくあるのだそうです。
宮崎県では、おそらく感度の高い(=疑わしい症状の場合もインフルエンザと見なして報告を行う)医療機関が多いのではないだろうか、と推測されます。というのもインフルエンザのみならず他の感染症についても多く報告があがっているからです。
結局のところ、このランキングで上位にランクインしたからといって、インフルエンザが大きく流行しやすい地域なのだといえるわけではなく、インフルエンザ流行マップと同じように、あくまで流行状況の指標とみなすぐらいがちょうど良いようです。
どこからともなく発生し流行するインフルエンザ。予防接種やうがい・手洗い、マスクなどで予防する傍ら、規則正しい生活・食事で体の免疫力を高めていくことが大切ですね。
〔更新日:2013年05月01日〕