小石原川沿いにのどかな田園風景が広がる朝倉市。ここには「甘い水」と書いて「あもうず」と読む地名があります。実は甘水は、まさに字のごとく「甘い水」が湧き出ることで付けられた地名なんです。そして驚くべきことに、この甘水の名付け親というのが、伝教大師最澄なのです。
最澄といえば、平安時代に空海とともに遣唐使として唐へ渡り、後に比叡山延暦寺を建立した天台宗の開祖。今も昔も歴史的超有名人ですよね。その最澄は、遣唐使として唐へ渡った後に、無事に入唐し帰朝できたことに感謝して筑紫の地を訪れました。そこで甘水の清流を見つけすくって飲んでみたところ、その水の味が甘露のごとく甘く清らかであったため、「甘水」と名づけたとのことです。
甘水地区は周囲を目配山や小富士といった山々に囲まれ、その山々は石灰層で形成されているそうです。この石灰層でろ過された水が山の谷間に注ぎ込み、美味しい水「甘水」として育まれてきたそうです。
この甘水を気軽に汲める「甘水の銘水」という水汲み場があります。
国道386号線の弥永交差点から秋月方面の県道594号線に入って、しばらく走った田園風景の中にあり、弥永交差点のあたりから、「甘水の銘水 あと○キロ」と書かれた看板が数ヶ所丁寧に設置されているので、道に迷うことはありません。水汲み場の入り口には大きく「甘水の銘水」という看板が出ており、その先にかやぶき屋根の水汲み場があります。
水汲み場には甘水の銘水の由来と、水質検査の報告書が掲示されています。その検査報告書を見ると、この水は硬度が55度で、ph値が6.8となっていました。厚生省(現厚生労働省)の「おいしい水」の基準のph値6.0〜7.5内で、まろやかなおいしい水であると証明されているわけですね。
実際に飲んでみると、甘みがある…とはっきり言えるほどの味はありませんが、とろっとのどを通るようで、ぬるくてもおいしかったです。料理やお茶をいれるのに良さそうです。
この甘水の銘水は、20リットルでたったの100円。とってもお手ごろ価格です。2機のコイン式給水機で水を汲めますが、注意点が2つ。1つは、この給水機は100円硬貨専用なので、必ず100円玉を用意しておくことです。
もう一つは、容器はペットボトルなどではなく10〜20リットルのポリ容器をお勧めするということです。というのも、この給水機の水はものすごい勢いで噴出されるんです。2リットルのペットボトルだとあっという間に満杯になり、水が溢れて衣服のすそや靴などが濡れそうになります。また、ペットボトルを地面に置いた状態では給水ホースが若干注ぎ口に届かないため、うまく給水するのが難しそうです。一時停止ボタンがあるので、水がこぼれっぱなしになることはないのですが、せっかく20リットル分給水することができるし、勢いよく水が噴出するため給水時間も短くて済むので、ポリ容器をお持ちになることをお勧めします。
この「甘水の銘水」は、久留米市北野町にある山口酒造場という酒蔵が、酒蔵の移転場所として準備していた場所だったそうです。1991年の大型台風で北野町にて営んでいた酒蔵が壊滅的な状態となり、いっそ移転して営業を再開しようとしていたときに、この甘水地区を知ったそうです。甘水の水や気候、風土などの良さから、移転先として決定したのですが、その後やはり元の北野町で再出発することになり、甘水の地は手付かずのままとなっていました。しかし、どうにかこの甘水の良さを伝えることができないかと思慮を尽くして、現在のような甘水の銘水を水汲み場として一般に開放することに決めたそうです。
最澄が見出した美味しい水が、千年以上を経た現在でも美味しいままで手軽に飲むことができるなんて、とてもありがたいですね。長い歴史のロマンや、昔と変わらない水質を保ち続けている甘水ののどかな田園風景を感じながら、美味しい水をいただいてみてはいかがですか。
|